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9月号:樹木剪定の適期とは?

(1)3者の言い分

「剪定はいつやるのが一番いいんですか?」長年植木屋をやっていて最も多く聞かれる質問である。
「それは、ウチが暇な時期ですよ。」と思わず言いたくなってしまうのだがそうはいかない。植木屋の都合で剪定時期を決めるのは虫が良すぎる。お客さんにも都合があったりする。それに、木にだって都合がある。3者の言い分は概ね以下のようになる。
植木屋の都合:1月から5月までは死ぬほど暇なので(ただし公共事業は年度末で忙しいらしい)この時期にやらせてほしい。真夏と真冬は体がきついので勘弁してほしい。雨の日もできればやりたくない。チャドクガがいる時期は避けたい。秋は仕事が立て込んできつい。
お客さんの都合:お正月はきれいな庭にして迎えたい(最近はこれにこだわる人はすくないが)。暑苦しい真夏はバサバサ切ってさっぱりさせてほしい。梅雨時は枝が雨で枝垂れて通路の邪魔なので切り詰めて欲しい。枝葉はいっぱい切ってもらったほうが得した気分になる。一回切ったらできるだけ長い期間伸びないでいて欲しい。花はなるべく見たい。実もたくさん成らせたい。
木の都合:真夏にスッカラカンにされたらお肌が焼けちゃって大変。そんなに思いっきり切るんならこっちだって負けないくらい茂り返してやるぞ。真冬に切られると傷がズキズキ痛むのよ。せっかく作り始めた花芽を切られるのは我が子を取り上げられるような悔しさ。そう何度も切られちゃ毎度芽を出しなおすだけでヘトヘト。枝葉を1/3にするなら根っこも少し切ってよ、吸い上げた水をどこから吐き出せばいいの?

(2)回答例

それぞれに言い分があるようで調停は難しいのですが、お客さんに即答しなくてはならないので、私は次のような答えを用意しています。
 A:とにかくバッサリ切ってしまいたいなら3〜4月。落葉樹なら2月頃でもよい。ただし、花芽は落すことになるので覚悟を。大きくなりすぎた木を仕立て直すには適期。木にもダメージが少なく、伸びるべき芽の数が限定されるのでそれほど荒れない。夏に強剪定すると方々から芽が吹いて始末に終えなくなるので逆効果。通常の剪定は新葉が固まるまで待ちましょう。

 B:5〜7月。切った部分から必ず芽が出るので(一部例外を除く)生垣などを混ませたり枝数を増やしたりしやすい。すぐに復活するので失敗して切りすぎても回復が早い。サツキやツツジの花が終わっていれば刈込みのチャンス。春に咲く木は8月には花芽が出来てしまうのでそれまでに。フジはツルがうっとうしくても切らずに我慢。

 C:9月も半ばになれば暮れまでの間はいつ切っても、来年の春まではその形が保てます。6ヶ月長持ちならお客さんも得した気分。ただし、植木屋の仕事はこの時期に集中してしまうので大忙し。予約が取れるかどうかが問題です。

(3)一般的な結論(関東地方基準)

と、いうわけで、一般的にはサツキ、ツツジが終わった頃9月半ば過ぎから極寒の前までが適期と言えるでしょう。
年1回で済ませるならいつ?と必ず聞かれますが、お客さんが得した気分になれる(剪定後伸びない)のは9月半ばから12月頃でしょう。キンモクセイがあるならその花が終わってから、カキの実を採りながらとなると11月頃でしょうか。
ただしこの時期に剪定すると、ウメもハクモクレンもハナミズキも来年の花数は減ってしまいますし、サツキやツツジをきれいに揃えて刈込めば来年の花が見られません。加減して切るとあまりさっぱり見せることはできません。
花は犠牲に出来ないとなるとやはり5月下旬から8月上旬頃まで、サツキ、ツツジが終わった時にやるしかないでしょうが、どうしても秋までの間に芽は伸び、形は崩れてしまいます。ある程度詰め込むことはできるので切った直後はさっぱりはしますが。

(4)理想的には・・・・(関東地方基準)

庭には様々な種類の木がありますので、それぞれの木によって剪定の適期も違うわけです。ひとっからげに何月、とはなかなか言えません。予算があれば年に2回以上やれば勿論ベストなのですが、最近は年1回だって必ずやるお客さんというのも減っています。
色々考慮して無理やり結論を出すとすれば、サツキやツツジは花が終わったらお客さんが自分で刈込み、ウメなどの徒長枝もとりあえず1/3位を切り詰めておく。そして9月過ぎに植木屋に形を修正しながら剪定してもらう。というのが最も経済的な方法かもしれません。

もちろん、植木屋としては「年2回頼んでくれればすっごくいい庭になるんだがなぁ」というのが本音なんですけどね。100歩譲って、せめて2年に一度は呼んでくださいな。それでもやらないよりはありがたいと思って一生懸命手入れしますから!

(5)最後に・・・・

さんざ伸ばしっぱなしにして、いよいよとなると植木屋を呼んでバッサリ切らせて「ああ、せいせいした」とご満悦のお客さんがおられますが、一度に大枝を切られるのは木はとてもつらいのです。定期的に少しずつ整形してあげてもらいたいものです。植木屋だって「さっぱりしましたねぇ」なんて言われたってちっとも嬉しくないんです。誰が切ったってさっぱりはしまさぁねぇ、切ってるんですから。「良くなりましたねぇ」とか「木が喜んでる」とか言われたいもんです。
それからマツだけはどうしたって年2回いじらなきゃなりません。これだけはお願いしますよ。


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