(有)木下庭園管理トップページへ

投稿日:2006/07/30(Sun)

Q:79  はじめまして。今の家に住んで2年くらいになりますが、今まで庭木に興味がなく、庭に植えてあった木の手入れ等は水遣りも一切やっていませんでした。当然庭木等の知識はなにもなくて、7月の上旬に庭をさっぱりさせようと思い、カリン、ツバキ、キンモクセイなどの木をばっさり強剪定してしまいました。ツバキ、キンモクセイは太い枝を何本も切り、全体的に透かしました。カリンは3mくらいでしたが、3分の2の高さまで切りました。しかし、夏の強剪定は木を痛めるということはあとから知りました(泣)やはり剪定後は葉が部分的に黄変して枯れてきています。

特にカリンの木は、剪定前から葉が全体的に枯れてきており、茶色い斑点が多くあったので病気なのかな?とも思い、一応殺菌剤を散布しましたが、病気なのか、土壌の栄養不足、その他の原因からくる枯れ混みなのかわかりません。(土壌は庭全体が粘土質で、肥料や管理は数年何もやってません。日当たりは良好です)ちょこちょこ若葉が出てきていますが若葉も枯れてきているものもあります。

これらの木を樹勢をなんとか回復させていきたいのですが、対策等のアドバイスをよろしくお願いいたします。

A:

 夏の強剪定がなぜいけないかというと、一つにはこの時期は木が一年のうちで一番疲れている時だからです。春から夏にかけて木々はぐんぐん若葉を伸ばし茂りだし、見るからに一番元気があるように思えますが、この力は去年の秋から冬に貯めておいたエネルギーを使っているのです。夏にはそれまで貯めていた栄養を全て使い果たしてヘトヘトになっている一番弱い時期なのです。

 茂らせた葉で強い陽差しから自らを守り、フルに光合成をして秋からその栄養をため込んでまた来年の芽吹きに備えるわけです。だから梅雨時期に剪定されると、もぎとられた枝葉を取り戻そうとして再度葉を吹き出します。前述のように全てのエネルギーを使い果たした上でさらに新芽を絞り出すわけですから木はもう瀕死の状態になってしまい、天候や病気、害虫への抵抗力が無くなってしまうのです。

 枝葉が極端に減らされることによって来年の分の栄養が十分に蓄えられないというのも問題ですが、当面の問題は夏の強い日差しから身を守る術を失ってしまっているということです。
 今まで上の方の葉の下にあった葉が直射日光にさらされれば「葉焼け」を起こしますし、幹は日影を失って「幹焼け」を起こします。幹焼けによって水の吸い上げが出来なくなり木が衰弱し葉が出なくなるという悪循環になります。

 とりあえずは強い日差しを遮ることが今してやれることです。ヨシズを立て掛けるなり遮光ネットを張るなりしてください。(ただし中で蒸れないように注意)
 幹巻き(木の幹に包帯を巻く)も有効ですが来年には外してください。幹でも光合成をしているので巻きっぱなしはまた問題です。
 あわてて肥料などを与えるのは逆効果です。瀕死の重病人にステーキは酷でしょう。与えるなら活力剤のようなものにしてください。

 カリンの葉枯れは栄養不足ではないと思います。肥料を与えないからといってそう簡単に枯れるものではありません。根が何かしらの障害を受けているか、枝や幹にシンクイムシが入っているかではないかと思いますが、おっしゃるように斑点性の病気(赤星病など)かもしれません。

 今回は木に可哀想なことになりましたが「夏の強剪定はよくない」ということがおわかりになっただけでも良かったのではないでしょうか?
 それがわからずに毎年木が茂ってくるこの時期になるとまるで仇のように切りまくっている方も大勢います。木のことを思いやってくれる人がここで一人増えただけでもよかったと思えるのです。

 かくいう私もこの時期お客様に「暑苦しいからバッサリやっちゃってくれ」と言われると内心ムカッとしながらもケツをまくるわけにもいかず、木が傷むと説得しても聞いてもらえなければ要望に応じてしまうのですから、なんとも因果な商売です。


樹木編へ戻る トップメニューへ