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〜なぜ花が咲かないの?〜


花芽分化について
○花の元はいつできるのか?
   
大まかに言えば、花芽分化(花芽の元が出来ること)は開花時期から逆算して6ヶ月〜9ヶ月前頃に行われます。例えばツツジなら、遅くとも8月(実際には6月中旬から8月中旬にはすでに)には花芽の元が出来てしまい、その時点でつぼみが形成されなければ「来年は咲かないよ」ということが決定されてしまうのです。つまり、花が咲いた数ヶ月後にはもう来年の花の準備が出来ていて、花の数も基本的には決定されているということです。暮れに一生懸命肥料を撒いたってこの事実は変えられないのです。近所で花が咲き出したのを見てあわてて木のケツを叩いたって無理な話です。
木の種類によっても花芽分化の時期は異なります。

○花芽が流れる原因
 花芽分化の時期に障害があれば花芽が出来にくくなります。花芽が付かない、または花芽ができても何らかの原因で葉芽に変化してしまうことを「花芽が流れる」といいます。
 つぼみの付け根に穴を開けて食い荒らすシンクイムシ系の害虫がいます。これにやられるとつぼみは無惨にもぽろりと落ちてしまい、芽先を摘まれた状態になった木はそこから葉芽を吹かせます。ツツジやサツキに見られる被害です。対処するには花芽分化期(8月中旬〜9月下旬)に消毒が必要です。落とされた花芽の後にもう一度花芽を吹かすことはあまりありません。

 花芽分化期に水気が多いと花芽が付きにくい事があります。必要以上の水が与えられると、植物はその水によって根が腐るのを防ぐため水分を早く蒸散させようとします。それによって葉の数を増やす行動に出るのです。花芽を作っている場合ではないので花芽になろうとしていた芽さえも葉芽に変化させてしまいます。土は、むしろ乾き気味の方が花芽は付きやすいのです。

 木が若い場合も花芽を作る作業よりも枝葉を増やして木を大きくすることを最優先するので、花芽は付きにくい(木が小さくても接ぎ木してあるものは別です)のです。人間だって子供のうちはとにかくいっぱい食べて大きくなり、体が充実してから初めて子供を作る作業に入るわけですからそれと同じです。子孫を残す作業(植物で言えば花を咲かせ種を作って子孫を増やすこと)は成人以降のことですからね。

 極端な日照不足の場合も葉数を増やして光合成をうまくやる必要があるので花芽は二の次になります。短日現象を察知して花芽を分化させるタイプの植物は、日光が当たらないと季節感をつかめず花芽分化を逃してしまうのかもしれません。しかし多少の日照不足は花芽分化にそれほど影響はしていないと私は経験上思っています。多くの植木屋がお客さんの質問に対して、とりあえず「陽が当たらないから花が咲かないんですよ」とあまりにも簡単に答えてしまっているのはどうかと思っています。ついでに申せば肥料不足というのも植木屋が「言い訳」によく使う手ですが、これもそれほどの問題ではない場合が多いと思っています。

 以外と盲点なのが雨のしずくです。ただの雨ならよいのですが、大きな木の枝葉からしたたり落ちる大粒のしずくには結構威力があります。ツツジなどの上を高木が覆っていると、日照不足の原因にももちろんなりますが、しずくで小さな芽を痛めているということも忘れてはなりません。

○人的影響
 剪定時期や剪定方法の誤りによって花芽を失っているケースが、実は一番多いのではないでしょうか?花芽分化後に枝先を切れば、虫につぼみを食われたのと同じ状態になります。ツツジやサツキを秋の手入れで刈り込めば当然つぼみを切り飛ばすことになります。

アジサイなども切り戻しが強すぎると次の花芽の元として準備されていた芽を切り落とすことになるし、フジは蔓が伸びきって伸張が止まる前に、うっとうしいからと蔓を切りつめると花芽になるはずだった芽が葉芽に変化してしまいます。


「咲かないお前が悪い」と植物を責める前に自分は花が咲く手伝いをしているのか邪魔をしているのかをよく知り、木について理解が不足していれば勉強しなければなりません。彼らの生き方に手を出したいのなら。水のやり方も肥料の与え方も、剪定の仕方も、本当にその植物の為になっているのか時々彼らの身になって考えてみてください。人間のひとりよがりって結構あるもんです。私自身偉そうなことは言えません、いつも失敗と不勉強に反省の毎日です。

木が枯れたり、花が咲かない本当の理由が、人間が変なもん作っちゃ空にばらまいたり川に流したりしているせいかもしれないってことも考慮してもう少し人間も謙虚に、せめて植物と同等の立場で対話すべきなのかもしれませんよ。我々よりずっと前から地球上に生きている彼らに対してちょっと高飛車で失礼なこと言う時ってありませんか?


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