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写真1は今年(2000年)枝を下ろした様子です。大きな枝を付け根から下ろすのは勇気がいります。かっこうが悪くならないかよくよく考えなければなりませんが、それは長年の経験で何とか判断がつきます。太い枝だから必ずしもその木の姿にとって大事な枝とは限りません。忌み枝になっていれば落とさねばなりません。また、なるべく小さくしてくれというお客様の要望も無視できません。忌み枝や切るべき枝は中途半端に残しても結局不要な枝であることには変わりがなく、いつかは付け根で切る羽目になります。太枝を寸胴に切って樹木本来の自然樹形を崩し、なおかつ腐朽菌を呼び込んでしまうくらいなら(図−1のAを参照)、なるべく早い時期に(木が若いうちに)将来を見越して不要な枝を判断し、付け根で一気に落としてその木自身の力で傷をふさがせたほうがよいのです。 |
図−1のA
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写真2は4年前(1996年)に当社で枝を下ろしたもののひとつです。大失敗しています!申し訳ありません。こんなに能書きを言っていても失敗してしまうのです。切断の角度がゆるかった為、カルスが巻き込めないでいます。ガジガジになりながら必死でカルスを形成しようとしているラインこそ、この木が「ここで切って欲しかったんだ!」と訴えているラインなのです。あまりにもわかりやすい例なので、恥ずかしながら反省をこめて自社の失敗例を挙げました。内部の様子は図−2の(1)にあたります。 |
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図−2−(1)(2)
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写真3と写真4も失敗の例です。失敗例2は角度の問題よりも切り口がデコボコだったか樹勢が弱かったかでしょうがカルスの形成が不十分です。チェーンソーなどで枝を下ろした後、切断面をカンナや専用の道具で丁寧になめらかに整形してやるとやらないとでは格段にカルス形成の出来が違ってきます(とっても面倒くさい作業なんですけど)。写真4はカルスもだいたい良いセンで出来ていて何が失敗なの?と思われるかもしれませんが、隣の枝に傷がついていますよね。おそらくチェーンソーの勢い余って隣の枝に傷つけてしまったのでしょう。恐ろしい腐朽菌はこんな傷からも侵入してしまうのです。だからこの例も大きな失敗といえるのです。 |
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写真5は成功例です。写真5は去年の切り口にカルスが巻き始めたところで、平均的に同じ幅で形成されているところを見ると切断角度が正解だったようです。 |
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それでは最後に具体的な切断ラインの決め方をお教えしましょう。写真を参照してください。写真10も11も理屈は同じです。まず、切ろうとしている枝の通り(芯)を出します。縦に引いた線がそれです。次に枝の股の部分の少し上(太さによって違うが5mm〜1cm)の所から枝の通りラインに垂直に交わる線を引きます。(あくまでも枝の通りに対して直角に交わるように引いてください。地面に対して平行とかではありません。)ここで写真をよく見てください。木の股のところから下に向かってグジグジグジとひだのようなものがありますよね?これをバークリッジ(branch bark ridge)というのですが、このバークリッジと先ほどの枝の通りに垂直に交わる線(仮にSラインとします)とが構成する角度を見てください。この写真の場合だと約80度から85度といったところでしょうか。このバークリッジのラインとSラインが構成する角度を1/2に分ける角度線を引きます。この、最後に引いた線が切断線というわけです。このラインを守って枝を落とせば腐朽菌の侵入を最小限に抑えた剪定ができるのです。 最後に注意していただきたいのは、バークリッジの一番上のグジグジとなっている部分をノコなどで傷つけないこと。必ず1cm程度離してください。股のど真ん中から切ると、この大事な部分(ちょっと卑猥ですか?)をだめにしてしまいますのでくれぐれも慎重にラインを決め、正確に切断してください。 |
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