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消毒についてよくある質問と私の回答例を挙げてみました。
ご注意
 当ホームページ内で記載されている病害虫に関する薬剤名及び対処法はその時点では認可されていたものですが、現在では失効となった農薬名も含まれています。

 また、2003年3月10日施行予定の「農薬取締新法」の動向によっては、記載事項のほとんどが無効となる可能性もありますので、充分ご理解の上お読みくださるようお願いいたします。
ホームページ管理人

Q:病気や害虫は予防できますか?

A:害虫は予防はできません。逆に病気は予防するしかありません。基本的には害虫は虫がいる時に虫を直接退治すること、病気は発生前に予防すること、が原則です。
 1〜2月に「石灰硫黄合剤」という薬剤を使うと病害虫の発生に予防効果がありますが、この時期しか使えませんし、金属を侵したり、硫黄の臭いを発するなど、住宅地では使いにくいものではあります。言うまでもありませんが殺虫剤で病気は治せません。病気には殺菌剤を使います。病気の原因が害虫にある場合は両方必要ですが。


Q:消毒はいつ やればよいのでしょうか?

A:虫は出たらすぐに、病気は出る前に早めに。
 ですから、いつ という限定はできません。病害虫の種類によって、またその庭の状況によって変わるからです。年2回だけと言われれば5〜6月と8〜9月頃と申し上げますが、それで病害虫が防げる訳ではありません。その時居た虫を退治するだけであり、その次の週に新たな虫が来れば、またそれに対処しなければなりません。病気に関して言えば病斑が出でしまったものは薬を掛けても元には戻りません。拡散を防げるくらいのものです。
 


Q:消毒は年に何回くらい やればよいのでしょうか?

A:それはあなたがどの程度病害虫の存在を許容するかによります。徹底的にやるなら年5〜10回以上、そこそこでよいならば年2〜3回でしょうか。
 何回撒いたから虫が出ないということはありません。虫はよそから飛んでくるものなのですから。ただ、経験上申し上げれば、年に2回コンスタントにやっていれば年々被害は少なくなり、虫が付きにくい庭にはなるようです。むやみに撒けば良いというものでもありません。能書きに従ってある程度の間隔を空けなければなりませんし、薬害も考慮しなければなりません。  


Q:消毒は何時頃 やればよいのでしょうか?

A:曇った日の夕方が最適です。雨が降りそうなら、なお結構。日差しの強い真昼は避けます。
 強い日差しは薬害(薬剤や水滴によって葉などに異常が起きること)を生じやすいからです。また夕方散布すれば、夜行性の害虫にも影響を与えることができます。なぜ雨が降りそうな方がいいのかは次。


Q:消毒した後に雨が降ってしまいました。大丈夫でしょうか?

A:散布してから1時間程度経っていれば全く大丈夫です。むしろ、雨に降られるのはラッキーです!
 薬害を避けるためにも、余分な薬液は流されてしまったほうがむしろ良いのです。それに薬剤には展着剤といって薬を落ちにくくする薬も添加してありますので、効果がまったく無くなる訳ではありません。第一、薬剤は葉の裏側に掛けてこそ効果があるもので、葉の表側には必要ないので、流されたほうが都合がいいのです。


Q:カキの実が付いている時期に消毒しましたが、その実を食べても大丈夫でしょうか?

A:散布してから1週間以上経っていれば大丈夫です。カルホス乳剤を撒いたのでしたら2週間待ってください。
 薬効が最も長いのはカルホスという薬です。2週間くらいまで葉っぱに付着しているようです。人間と毛虫の体重差から考えれば、ほとんど問題はないのですが念のため。それ以外の薬はほとんど残留しませんので4〜5日経てばまったく問題はありません。


Q:ツバキのチャドクガを消毒してもらったのに、いまだに”かせてしまう”のはナゼ?

A:
チャドクガの毒が残っているからです。
 チャドクガ(毛虫)などは殺虫剤で殺してもその死骸の毛から毒が飛ぶので、消毒をしたからといって安心はできません。枝ごと切り取って焼却してしまわない限りやられてしまいます。成虫の蛾や卵を包む麟粉からも毒が飛びます。やっかいな虫です。


Q:消毒のコツはなんでしょう?

A:とにかく葉っぱの裏をめがけてまんべんなく、しかしあっさりと掛けるのがコツです。
 したたるほど掛けてしまうとせっかくの薬液が雫となって落ちてしまいます。さりとて薬剤が掛からなければ退治はできません。簡単なようでかなり難しい作業です。
 木によって付く虫も病気も違います。私は社内で「付いている病害虫を想像しながら撒け」と指導しています。図鑑で虫の写真を見て名前を記憶させます。そうすればおのずと腰をかがめて葉の裏を狙う姿勢になります。雨を降らせるように上から撒いている者や、虫の付いていない木に一生懸命掛けている者には病害虫の知識が乏しいものです。消毒は下っ端の仕事では決してありません。


Q:自分で撒こうと思うのですが体に害はありませんか?

A:どうでしょう。害がないわけはないでしょうが、私は15年以上やってきてまだ生きています。
 世の中に散らばっている様々な害の中ではまだまだ安全な方ではないでしょうか。農作物のほうが庭木より何倍も農薬を使っていて、それを我々は口にしているわけですし。規模の大きい消毒が5日も続くと吐き気がする時はあります。
 とにかくご自分でやる場合は、風のない日を選んで、皮膚に薬液を付けないよう注意してやってください。散布後はセッケンで手や顔を洗い、直後の飲食や喫煙は避けましょう。


Q:プロはどんな薬を使っているのですか?

A:それは企業秘密ですから、、、、なんてことは申しません。ウチで使っている薬をご紹介しましょう。いうまでもなくこれが絶対というわけではありません。
 あまり詳しく説明しても長くなるだけですので簡潔にいきます。まず、アブラムシ類などの樹液を吸うタイプの害虫には浸透移行作用型の薬剤を使います。この手の虫は小さくて全ての虫に確実に薬液を掛けるのは難しいので、木に薬剤を吸収してもらい、虫は樹液に溶け込んだ薬剤を吸うことによって死ぬ仕掛けです。これなら虫に直接薬液が掛からなくても退治できるわけです。以前はエストックスを使っていましたが現在はキルバールという薬を使っています。オルトランなどもこの系統です。ただし、この薬はアブラムシ程度の大きさの虫に効果があるのであって、毛虫などには効きません。アブラムシを退治してくれるテントウムシを殺傷するほどの力もありませんから益虫を殺さず害虫だけやっつけることができます。

 ではケムシはどうやって退治するのか。それには2つの方法があります。一つめは接触作用型の薬剤。これは即効性で、掛かった虫を短時間で殺します。言ってみればキンチョールのようなものです。ただし、掛からなければもちろんなんともありません。薬効も通常1〜2時間程度で時間が経てば分解してしまいます。一般家庭でよく用いられるマラソンやスミチオンなどはこれにあたります。ウチではディプテレックスを使っています。ハチなどもこれを掛けるとおとなしくなってしまいます。しかし、確実に虫に掛けなければならず現実的には難しいので二つめの方法があります。
 それは食毒作用型の薬剤です。代表的なのはカルホス乳剤で、この薬は分解が遅く、約2週間薬効が残留します。ですから直接虫に掛からなくても、時間内に虫が薬液の掛かった葉っぱをかじれば効果があるわけです。ハムシやコガネムシなどのようによそから飛んできて食害し、また去っていくような虫にも効果が期待できます。また、カイガラムシにも効果があるので重宝です。
 サツキやツゲなどに付くハダニ類は昆虫とは違うそうで、殺ダニ剤も専用のものがあります。ケルセン、ダコニール、テデオンなどがあり、ハダニの成長過程によって使い分けねばならず、同じ薬を何度も使えないなどいろいろ複雑なので質問があったらお答えすることにします。前述のキルバールは殺ダニ効果も少しあります。

 というようなわけで、ウチでは虫によってこれらの薬剤を使い分けたり、混合(混合に適合しているものは)したりして使用しているわけです。あくまでも対象となる害虫が何であるかによって使用する薬剤は違うのです。またこの他に病気が出ていたり、出る可能性があれば病害用の殺菌剤も使用します。これも病気によって違いますが、ウチで主に使うのはベンレートとサプロールです。これらは有効範囲が広く、殺虫剤とも混用できるので便利です。

 ついでにお話しておきますが、通常これらの薬剤は1000倍に希釈して使用しますが例えばディプテレックスとカルホスを混用する場合はそれぞれに共通の成分もあるので70%程度薬液を減らして混合します。でないと濃すぎてしまうからです。また、聞いた話によると「木酢」を混用すると薬液はもっと節約できるそうです。

 大事なことを言い忘れました。ご紹介した薬剤はほとんどが毒・劇物ですので、一般の方が購入する場合にはハンコが必要です。毒・劇物といっても使用法さえ間違えなければ生死に関わるような薬ではありません。残留期間が長すぎるものや効き目が強すぎるような薬は認可されるはずありませんし、我々プロは”もぐりの植木屋”でない限り「病害虫防除業届」というお役所のお墨付きをいただいて仕事をしていますので安心してご依頼ください。




その他、消毒について以前届いたメールでの質問と私なりの返答を転記しました。


Q:我が家の庭木について困っていて、検索をしている間に、ここへたどり着きました。

紅かなめを植えているのですが、 かならず毎年、葉に斑点が出来てしまい、ほとんどの葉が落ちてしまいます。
ほとんど、手入れらしいこともしておりませんので、 仕方がないといえばそうなのですが、 どこから手をつけてよいやら、わかりません。

5月初めには、毎年、消毒をするのですが、 (その時点では、葉も元気よく繁っており、今年は大丈夫かと思ったのですが。) それだけでは、まったく効果がないということなのでしょうか?
基本的な手入れ方法を教えて頂ければ、幸いです。

A:メールありがとうございます。
あなたのいうベニカナメとはいわゆる日本の「紅かなめ」なのか 近年よく見られる「西洋ベニカナメ(レッドロビン)」なのか 私の想像では多分後者のことでご相談されているのではと 解釈するのですが、どうでしょうか。

斑点はたぶん「褐斑病」だと思いますが、これは両者共に共通なので ひとつの説明でよいと思います。
「褐斑病」は風で飛んできた病原菌が気孔から侵入し 約1ヶ月の潜伏期を経て発病するもので、慢性的な病気となります。
病葉上で越冬した病菌から4月頃胞子が飛散して拡散していきます。
潜伏期が長いので症状に気づいてからでは手遅れですので、 毎年発病する木には4月頃からダイセン、マンネブダイセン、 ダコニール、トップジンM、ベンレートなどを半月ごとに2〜3回散布する必要があります。
あなたのお住まいの地方がわかりませんが、5月では遅いかもしれません。 それに1回の消毒では効果は薄いでしょう。(やらないよりはいいけど) ウチではベンレートを主に使用しています。

ただし、消毒したからといって病気にかからないわけではなく タイミングが悪ければ、その後に飛んできた病菌にやられてしまうし、 消毒によってこの斑点が消えることはありません。 要は、菌が付く前に予防するということと、数回続けるということです。
それから、病菌に侵された落ち葉を放置しないことがとても大事です。 冬場落ち葉掃除を怠ると、翌年の発病を促しているようなものです。

日本の「紅かなめ」は「西洋ベニカナメ」に比べると 成長も遅く萌芽力も弱いので枯れ死に至るケースも多く、 生産者も最近はあまり生産販売しなくなってしまいました。
「西洋ベニカナメ」は前者に比べるとかなり強くて 成長力も旺盛ですが、ひどい場合にはやはり枯れます。
「褐斑病」になってしまった時の対処としては、 病葉を取り除き、消毒(殺菌)して即効性の施肥をして 萌芽力を高めるしかありませんが、すでに弱り始めた木は いくら肥料をやってもかえって逆効果(肥料焼け)にもなります。
普段から樹勢をつけておくしかありません。

風通しも必要ですが、いっぺんにブッツリ切って木を弱らせないよう 剪定も適度にしないといけません。 前者の「紅かなめ」は特にいじめると枝枯れしたりします。
一度にたくさん切らず、木のご機嫌を見ながら数回に分けて 刈込む計画を立てるとよいでしょう。(せめて年2回に)

こんなところの回答でいかがでしょうか? わからない点があればまたメールください。

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 「消毒」と一口に言っても殺虫剤と殺菌剤は全然違います。まず、侵されたその部分が病気なのか、虫による被害なのかを見極めることが大事です。
消毒一般に言える事ですが、害虫に関しては、「虫がいたらやる」、病気に関しては「病気が出る前にやる」と考えてください。
 要するに、害虫は対処、病気は予防が原則で、その逆は効果がありません。害虫用の忌避剤(虫が嫌がる薬)は一種の予防効果かもしれませんが、基本的には害虫は予防できません。今いる虫を今やっつけるしかないので、何月ということはなく虫を発見したらやるというのが答えです。
 病気は逆に発病してから消毒しても病斑などが治るわけではありません。病気になる前に殺菌して菌の繁殖を防ぐことが肝要です。
 冬場に散布する「石灰硫黄合剤」などは例外的に病気や害虫を”予防”することができます。ただしこの薬は1〜2月しか使えません。

ついでにお話すると、虫も病気もその部分を切り取って焼却してしまうのが一番完璧な方法なのです。病気になった葉はそこから菌が繁殖してまたどこかに飛んで行きますし、チャドクガ(毛虫)などは 殺虫剤で殺してもその死骸の毛から毒が飛ぶので、消毒をしたからといって安心はできません。ひとつひとつシラミツブシになんて、なかなかできませんけどね。


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